ファクタリングと約束手形はどう違うのか

ファクタリングと約束手形の違いを説明できますか?

ファクタリングと約束手形の違いを説明できますか?

ファクタリングとは貿易の盛んなヨーロッパにおいて構築された輸出代金の支払い保証の仕組みが発端となった金融システムです。
日本においては手形文化が発展していたため、これまではあまり注目を浴びてきませんでした。
しかし近年、電子決済などが普及するにつれ、アナログな手形取引が減少してきたことでファクタリングを提供するサービス会社が増えてきました。
もっとも、両者の違いをしっかり説明できる経営者は少ないのではないでしょうか。
若手の経営者はファクタリングなら知っているけれど、手形を使ったこともないし見たこともないと言うかもしれません。
一方で、実績のある経営者の場合、手形取引なら知っているけれど、ファクタリングなんて聞いたこともないと言うかもしれません。
もっとも、手形取引も廃れたわけではありませんから、ビジネスをしていくうえでは約束手形を振り出される場合や回ってくる可能性はあります。
ファクタリングと約束手形の違いを理解して、困ったときにうまく使い分けることや倒産の危機さえ招きかねないリスクを回避できるようにしておきましょう。

約束手形の特徴

約束手形は代金の支払いを先延ばしする手段の一つであり、代金を支払うべき取引先が仕入れ先などに対して、先の日付で支払うことを約束した証書のようなものです。
約束手形には支払いをする金融機関名なども記載されます。
約束手形を受け取った取引先は、その期日まで保有し、指定された金融機関の窓口に行くことで支払いを受けることができます。
もっとも、支払う資金がなければ、支払いを受けられません。
約束手形の支払いがなされない事態になることを、手形の不渡りと呼んでいます。
約束手形を振り出した企業は6ヶ月以内に2回不渡りを出してしまうと、すべての金融機関に通達され、金融機関における決済が2年間停止されてしまうのです。
企業においては致命的であり、不渡りを出すことは実質的に倒産につながります。
中小零細企業間で約束手形のやり取りをしていると、1つの企業が不渡りを出すことで、連鎖倒産をするリスクもあるので注意しなくてはなりません。

ファクタリングの特徴

これに対してファクタリングは、売掛金や受け取った約束手形をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、即現金化ができる手段です。
中には取引先が破綻して回収不能となった際に支払いをしてくれる、保証ファクタリングというサービスを提供しているケースもあります。
支払いの先延ばしを、約束手形を受け取って期日まで待っている場合、その間にも取引先が経営を悪化させていく不安が残ります。
ファクタリングを利用すれば、不安を解消し、支払期日が来る前にファクタリング会社に買い取ってもらって現金を手に入れることや万が一の場合に保証を受けることもできるのがメリットです。
利用にあたっては、売掛債権を有している取引先や約束手形を振り出した振出人について審査が行われます。
審査の結果、引き受けの有無を決することや割り引かれる手数料の率などが決められます。

ファクタリングと似ている手形割引との違い

もっとも、約束手形も約束した支払期日まで漫然と待っているだけではなく、そのほかの活用法もあります。
1つは手形割引という方法です。
支払期日が到来する前に銀行や手形割引の専門会社などに行って、期日までの利息相当分の割引手数料を支払って買い取ってもらう方法です。
期日前に現金化できるメリットがあり、この点ではファクタリングと極めて似ています。
ですが、ファクタリングと違って、実際の支払期日がきて、振出人が支払えずに不渡りを出した場合、そのリスクは手形割引を依頼した人が追わなくてはなりません。
また、手形割引をしたい場合、銀行では利用者が融資を受けるのと同様の審査が必要となるケースも多いです。
銀行取引実績が豊富で、銀行との信用関係が構築されていないと、手形割引が受けられない場合もあります。
これに対してファクタリングは、審査の対象となるのは約束手形の振出人や売掛債権の取引先であって、依頼者は創業間もないなど信用力が薄くても利用できる可能性が残されています。

約束手形の裏書譲渡について

約束手形には期日前にほかにも現金化ができる方法があります。
受け取った約束手形を、自社が仕入れ先となった場合などに代金の支払い代わりに譲渡する方法です。
譲渡時に約束手形の裏側に署名をしていくので、裏書譲渡と呼ばれています。
もっとも、裏書譲渡も譲渡することで不渡りリスクから解放されるわけではありません。
不渡りが起こると、約束手形を買い戻さなければならないルールだからです。
最後に裏書した者から順に買い戻し、最終的には手形決済できなかった振出人が買い戻す流れになりますが、すでに不渡りを出している以上、買い戻す資金もなく、直接の取引相手が損失を被ることが多いです。
ファクタリングも約束手形を譲渡できますが、債権譲渡の方式を採るため、裏書責任からは解放されます。

まとめ

約束手形とファクタリングは似ている要素もありますが、約束手形のほうが古い商慣習もあり、最後まで不渡りリスクに縛られます。
これに対して、ファクタリングは債権譲渡により、早期の現金化や支払い不能リスクからの解放が期待できるのが違いです。

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