ファクタリングの償還請求権

償還請求権
気を付けたいファクタリングの償還請求権
目次
償還請求権の有無に注意
ファクタリングの償還請求権とは、万が一、売掛先から売掛金の回収ができなかった場合には、債権譲渡をした企業に対してファクタリング会社が償還請求できる権利が発生するというものです。
ファクタリングのあらゆる取引で償還請求権が発生するのではなく、契約において買戻特約を付ける場合や償還請求を約束した場合のみ発生します。
償還請求権の意味をよく理解せずに、償還請求権ありのファクタリング契約をしてしまうと、債権譲渡したことで売掛先やファクタリング会社との取引関係から解放され、買取代金を自在に利用できると思っていたのが、思わぬリスクを負うことになりかねません。
償還請求権ありのファクタリングのリスクが大きな理由
償還請求権ありのファクタリングが利用する企業にとってリスクが大きいのは、売掛先の倒産などのリスクを背負わなくてはならないからです。
そのリスクについて理解するために、まずは、償還請求権なしのファクタリングの仕組みを理解しておきましょう。
A社が3ヶ月後を支払期日としてB社に有している売掛債権200万円を、ファクタリング会社に160万円で買い取ってもらったとします。
B社の支払期日まで待っていれば200万円の支払いが受けられますが、ファクタリングをすることで手数料が40万円差し引かれるものの、3ヶ月前倒しで今すぐ160万円の現金を得ることができます。
ファクタリング会社は3ヶ月後の支払期日にB社から200万円を回収できますが、もし、この際にB社が経営状態が悪化して支払いが困難となった場合や倒産してしまった場合はどうなるでしょうか。
A社に対する償還請求権はないので、B社の不払いのリスクはファクタリング会社が負い、A社は何のリスクも負いません。
40万円の手数料を払う代わりに、B社から売掛金を回収できなくなるリスクはファクタリング会社に移転できるのです。
もし、B社からの支払いを3ヶ月後まで待っていたら、A社はB社の倒産で一銭も得られなかったかもしれません。
ですが、ファクタリングをしたことで、40万円の手数料と引き換えに160万円を得ることができたのです。
償還請求権ありの場合
同様の事例で、償還請求権ありのファクタリングであれば、どうなるでしょうか。
A社が3ヶ月後を支払期日としてB社に有している売掛債権200万円を、ファクタリング会社が180万円で買い取ってくれるとしましょう。
手数料が20万円に減っているのは、万が一、B社が倒産してB社から売掛金が回収できなくなっても、A社に対して償還請求権を行使し、200万円の回収可能性が残されているからです。
いわば、A社が保証人的な役割を果たすのが償還請求権ありのファクタリングです。
A社は支払期日より3ヶ月前倒しで180万円受け取ることができますが、もし、支払期日にB社が支払いができない場合には、ファクタリング会社の償還請求に応じて200万円を支払わなくてはなりません。
3ヶ月待っていればB社から200万円受け取れるか、B社が倒産した場合には不良債権として200万円の損失を負担することになります。
ですが、ファクタリングをして償還請求されたことで、手数料20万円の負担に加えて、B社に代わって200万円も支払わなくてはならず、220万円の損失が発生することになってしまうわけです。
償還請求権ありとなしのファクタリングの選び方
この点、支払いリスクの大きさからいえば、償還請求権なしが安心です。
もっとも、売掛先が優良で償還請求されるリスクが極めて低いのであれば、償還請求権ありのほうが、通常は手数料が低いのでお得にファクタリングができ、手取り額が大きくなります。
そのため、償還請求権ありとなしを選べる場合にはコスト面と売掛先の経営状態などをしっかりと見極めたうえで判断することが大切です。
償還請求権ありの場合、売掛先が万が一倒産した場合でも利用する企業に償還請求ができるので、審査も比較的緩やかでよりスピーディーに現金化できるメリットもあります。
審査の対象も売掛先よりも、利用する企業重視になるため、自社の信用力が高ければ、よりスピーディーに現金化が可能です。
これに対して、償還請求権なしの場合は売掛先の審査が厳しくなります。
優良な取引先の売掛債権を有しているなら、自社の資金繰りが多少悪化していても、スピーディーに現金化できる可能性があり、しかも、償還請求も受けないので、多少手数料が高くても有利に働く場合もあります。
いずれの方式が良いかは、自社の状況や資金ニーズ、売掛先の信用力を総合的に考え、手数料なども加味して判断することが大切です。
まとめ
償還請求権とは、ファクタリングで売掛先からの代金回収ができない場合に、ファクタリングを依頼した企業へ支払いの請求ができる権利です。
手数料は安く、スピーディーに現金化できるメリットがある反面、売掛先の資金繰りの悪化や倒産リスクをかぶることになるため注意しましょう。