ファクタリングの歴史と仕組み
目次
日本におけるファクタリングの歴史と仕組み
ファクタリングとは企業が取引先に対して保有している売掛金や受取手形などの売上債権の管理を引き受け、債権回収をはじめ、万が一、支払いができなかった場合の保証を行う金融サービスです。
ヨーロッパで発達し、売掛金を主な対象にして債権譲渡を行い、支払人の信用リスクや回収管理を総合的に引き受ける貿易・金融システムであり、
日本では独自の手形取引が発展したことで、債権譲渡はなされずに、受取手形の決済保証として利用されてきた歴史があります。
近年では電子決済などが普及し、古い文化を知らない若手経営者などによる新しい企業が増えてきたなど、日本でも取引慣習に変化が見られてきました。
そこで、日本でもファクタリングを専門的に行う会社やファクタリングサービスを提供する金融機関が増えてきたのです。
対象も、以前からサポートしてきた受取手形だけでなく、売掛金へと拡大しています。
債権の支払保証に加えて与信管理のコンサルティングサービスも提供されるようになっています。
現在日本で行われているファクタリングは、日本独特の手形取引文化から発展した売上債権の決済保証をする保証ファクタリングと海外取引をサポートする国際ファクタリングなどが代表的です。
買取ファクタリングについて
買取ファクタリングは、請求書買取ファクタリングとして、売掛債権を買い取り、支払い期日より早く資金化できるサービスです。近年では、中小企業の新たな資金調達方法として注目されています。
詳細はこちらの記事を参照ください。「資金切りに最適なファクタリングとは」
保証ファクタリングについて
保証ファクタリングは日本で商慣習としても根付いてきた、根保証を利用する仕組みです。
取引先の倒産などで売掛金や受取手形などの売上債権の回収不能リスクを回避することができます。
仕組みは以下のような形です。
A社がB社に対して毎月100万円の商品を継続的に納品しており、代金の支払いは3ヶ月後の契約を締結しているとします。
A社は商品を売ってもすぐに現金を受け取ることはできず、毎月B社に対する売掛債権が発生していきます。
近年の経済環境の目まぐるしい変化で、B社の経営が一気に悪化し、B社から支払いの先延ばしを依頼されるなど、代金支払いに不安が生じたとしましょう。
約束通りにB社から代金を受け取れないかもしれないと不安になったA社は、ファクタリング会社に保証を得られないか相談します。
現在B社から受け取る予定となっている月100万円×3ヶ月分の300万円を保証してほしいという内容です。
申し込みを受けたファクタリング会社は、支払先であるB社について審査を行います。
その結果、300万円は保証できないものの200万円までの保証が得られたとします。
この点、審査の結果は全額NGとなる場合もありますし、申し込んだ希望額全額となる場合もありますし、それは取引先の与信審査次第です。
今回の事例で、もし、B社が倒産して代金を支払えなくなった場合には、ファクタリング会社はA社に対して200万円までの範囲で支払いをしてくれます。
ファクタリングをすることで、本来未回収、回収不能となるはずだった300万円のうち、200万円についてファクタリング会社にリスクを移転でき、A社は200万円分の損失を回避することができました。
回収不能な損害額は100万円に抑えられたという事例です。
今回の事例ではB社が倒産してしまいますが、倒産せずにどうにか頑張っている場合でも、根保証の仕組みを採っているので、常に保証限度額内で債権の追加ができます。
たとえば、1ヶ月分の支払いが得られれば、100万円減りますが、新たに納品した商品代金の売掛金を追加することが可能です。
また、取引先ごとに審査を受けて保証の有無や保証限度額の設定が受けられます。
販売額が減った場合や保証の心配がなくなった取引先に対しては保証限度額を減らし、販売が増加した取引先に対しては追加審査を受けたうえで保証限度額を増やすなど柔軟に保証が受けられるのが、根保証を利用した保証ファクタリングの利便性の良さです。
国際ファクタリングについて
国際ファクタリングは、輸出取引で発生する代金の回収を保証してもらう仕組みです。
ビジネスのグローバル化で海外と取引する企業も増えています。
海外企業の与信調査などは1企業では難しい場合もあるため、ファクタリングへのニーズが増えてきました。
従来の輸出取引では、輸出代金回収に都市銀行などの大手銀行の取消不能信用状や保証状を入手した場合や輸出国における輸出貿易保険を利用するのが一般的でした。
ですが、中小零細企業などは大手銀行の保証を受けにくいほか、受けられる場合でも、輸入国の制度により信用状などの発行が難しいなど手続きが煩雑で、追加費用が発生するデメリットがあったのです。
そこで、輸入業者などの信用リスクを回避するために、国際ファクタリングに注目が集まっています。
たとえば、輸出輸出代金を船積後30日後に送金する決済条件がある場合、ファクタリング会社から100%の支払保証を取得して、安心の輸出契約を締結することが可能となります。
ファクタリング手数料は輸出業者が負担しますが、輸入者の不払いなどの信用事故が生じれば、ファクタリング会社から未回収となった代金の支払いが受けられます。
基本的には、4社間ファクタリングとなります。海外取引先、輸出業者、国内ファクタリング会社、海外ファクタリング会社の間で取り決める契約になります。
まとめ
近年ファクタリング会社やファクタリングサービスを提供する金融機関も増えてきました。
経済が不安定な中、売掛をしている場合や回収できるか不安という場合には、ファクタリングの仕組みをしっかりと理解して活用を検討してみましょう。