ファクタリングの会計処理はどうする?仕訳など経理の基礎知識

ファクタリングの仕訳は種類で違う

ファクタリングの仕訳は種類で違う

ファクタリングには保証型と買取型があり、それぞれ仕訳が異なります。
まずはこの2種類を詳しく理解しましょう。

・保証型ファクタリングとは

保証型は、債権に保険をかけておく方法です。
自社が保有する債権の保証対象先が、万が一倒産するなどで債権回収が不可能になった場合、保証限度額内で支払いが受けられるという内容です。
ここまで読んでわかるように、保証型は損害保険とみなすことができます。
そのため、会計処理としては損害保険に即した仕訳となるのです。
この形の場合、契約締結時には仕訳はせず、実際に売掛債権の回収不能が確定した段階で仕訳を切ります。
1,000万円の場合でまとめておきましょう。
まず、回収不能となった債権の金額で貸倒損失処理を行います。
借方科目:貸倒損失、借方金額:1,000万円、貸方科目:売掛債権、貸方金額:1,000万円
次に、ファクタリング契約で受け取った金額を雑収入として入金処理を行います。
借方科目:現金預金、借方金額:1,000万円、貸方科目:雑収入、貸方金額:1,000万円
となります。

・買取型ファクタリングとは

買取型は、債権を第三者に売却または譲渡する方法です。
これにより債権を現金化することが可能となり、手数料を差し引いた分が手元に入る仕組みになっています。
さらに買取型には2つの分類があります。
1つは、自社とファクタリング業者の間だけで取引する「2社間ファクタリング」です。
もう1つは、自社とファクタリング業者に加えて債務者も含めて取引する「3社間ファクタリング」です。
それぞれの会計処理を1,000万円で手数料5%の場合で見ていきましょう。

1.2社間ファクタリングでの売買取引

2社間ファクタリングでの売買取引の場合、ファクタリング契約締結時に以下の仕訳になります。
借方科目:未収入金、借方金額:1,000万円、貸方科目:売掛金、貸方金額:1,000万円
次にファクタリング業者から入金があった段階で次の仕訳を行います。
借方科目:現金預金、借方金額:950万円、貸方科目:未収入金、貸方金額:1,000万円
借方科目:売上債権売却損、借方金額:50万円
そして債務者から入金があった段階で、借方科目:現金預金、借方金額:1,000万円、貸方科目:預り金、貸方金額:1,000万円
最後にファクタリング業者への返金の段階で、借方科目:預り金、借方金額:1,000万円、貸方科目:現金預金、貸方金額:1,000万円
となります。

2.3社間ファクタリングでの売買取引

3社間ファクタリングでの売買取引の場合、ファクタリング契約締結時に以下の仕訳になります。
借方科目:未収入金、借方金額:1,000万円、貸方科目:売掛金、貸方金額:1,000万円
次にファクタリング業者から入金があった段階で次の仕訳を行います。
借方科目:現金預金、借方金額:950万円、貸方科目:未収入金、貸方金額:1,000万円
借方科目:売上債権売却損、借方金額:50万円
以上です。

なぜ仕訳の必要があるのか

ファクタリングも事業遂行のための取引ですので、通常の営業活動と同様にすべて仕訳をする必要があります。
年間の取引は貸借対照表や損益計算書などにまとめる必要があり、日々仕訳をしておかないと会計書類の作成ができません。
会計書類が必要になるのは確定申告の際や金融機関から融資を受ける際になりますが、何よりも経営者が経営状況を正しく把握するための判断材料です。
ちなみにファクタリングを利用しない場合、売掛金の処理は現金ではなく売掛金の勘定項目にプラスすることになります。
借方の売掛金と貸方の売上が同額となり、入金されると借方の普通預金と貸方の売掛金が同額となります。
この仕訳で売掛金はプラスマイナスゼロとなり、売上金額と普通預金額が一致するのが基本です。

ファクタリングの会計処理で注意点とは

会計処理には発生主義と現金主義とがありますが、基本的に企業の会計では発生主義となり、実際に入金がなくても売上発生のタイミングで会計処理することになります。
このことにより、ファクタリングを行う場合、入金されるまでの間にかなりさまざまな仕訳が発生するのが注意点です。
あくまで社内であれば現金主義でも良いとされてはいますが(2021年段階)、帳簿は原則発生主義で作成するのが基本です。
そのためファクタリング契約のタイミングによっては、現金化前に課税され、法人税を支払わなければならなくなる懸念があることを認識しておいてください。
入金までの間に会計期間をまたいでしまうケースがそれにあたりますので、タイミングは考慮する必要があります。

まとめ

ファクタリングの会計処理は、ファクタリングの種類によって仕訳の切り方が異なります。
特に2社間ファクタリングの売買取引では仕訳が多くなるので、日々正しく処理をしておくことが重要です。
理屈がわかれば難解なものではありませんが、正しく処理できるよう理解しておきましょう。
経理の知識を持つ専門家が社内にいない場合でも、事業を行う以上は会計処理の基礎知識は身につけておく必要があります。

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