ファクタリングと金融庁の方針について理解しておこう

ファクタリングに対する金融庁の方針

ファクタリングに対する金融庁の方針

ファクタリングは銀行などの金融機関や消費者金融などの貸金業者とは異なる業者が提供しているケースも多く、許可制でもなければ、登録番号などもないことから、違法な資金融通手段ではないかと不安になる場合や手を出さないほうが良いのではと敬遠する経営者なども少なくありません。
ですが、もともと日本でファクタリングが注目されたのは、2013年に金融庁が方針を出し、動産や売掛金担保融資の積極的な活用を推進したのがきっかけです。
中小企業など銀行融資や株式市場からの資金調達が困難なケースでも、経営改善や事業再生のための資金や新たなビジネスにチャレンジするための資金の確保がファクタリングを通じて行っていけるよう、金融検査マニュアルの運用の明確化を行うと打ち出したのです。
それを受けて、経済産業省中小企業庁が債権の積極活用を提言したこともあり、2017年~2018年にかけて、ファクタリング市場も大きく成長を遂げました。
市場の拡大を受けて、大手の金融機関系のファクタリングサービスに加えて、中小やベンチャーのファクタリング会社がどんどん参入する状況になっています。

コロナ禍における法改正による後押し

2020年に入り、世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大していき、日本でも2月頃から次第に飲食店や小売店、観光業などの売上が減少し、資金繰りが悪化していきました。
さらに3月の緊急事態宣言を受け、一気に経営が悪化し倒産する企業も出てきました。
そんな2020年4月に改正された民法が施行され、債権譲渡を制限する特約付きの債権であっても、債務者の承諾を受けることなく譲渡ができることになったのです。
日本の商慣習では売掛金の取引において、第三者には譲渡しないといった特約を付けるのが一般的でした。
そのため、従来、ファクタリングされてきたのは、譲渡を禁止する特約が付いていない数少ない売掛債権に限られていたのです。
金融庁や経済産業省としても、改正民法の施行で、中小企業の資金調達の円滑化を図ろうと積極活用を促しました。
一方で、企業の間には困惑があったのも事実です。
いかに民法上、譲渡制限特約が付いた債権の譲渡が有効になるといっても、従来の譲渡制限特約も有効であるため、売掛先との譲渡制限特約付きの契約違反となり、違約金を請求されることや取引関係を切られるなど信頼関係の悪化を招くのではないか、ビジネスに影響が出るのではないかと懸念されたのです。
そうした不安の声を受け、経済産業省では法務省の見解を公表しました。
資金調達目的の債権譲渡は契約の解除や損害賠償の対象とはならないこと、そして、売掛先にとって譲渡されても特段の不利益がないにもかかわらず、ファクタリングを行った企業に対して、取引の打ち切りや解除を行うことは権利濫用にあたるという見解です。
こうした見解を受け、譲渡制限特約の有無を問わず、ファクタリングがしやすくなりました。

ファクタリングに対して金融庁から注意喚起が

コロナショックで経営状態が悪化し、資金繰りが厳しくなり、手持ちの売掛金をファクタリングする中小零細企業や個人事業主も増えてきました。
一方、それにつけこんだ闇金業者が増加しており、金融庁では事業者向けファクタリングに関する注意喚起を出すに至っています。
闇金業者かどうかの見極めポイントとして、金融庁では以下の2つの点を挙げています。
ファクタリングを申し込んだのに、契約書には債権譲渡契約(売買契約)だと定められていない、業者から受け取る買取代金が、債権額に比べて著しく低額であるといった場合です。
債権譲渡契約ではない以上、形としては貸付と同等の行為であり、ファクタリングではありません。
こうした業者の行為は貸付にあたるため、貸金業登録が必要です。
貸金業を行っているのに登録をしていない業者は、法律違反の違法業者であり、いわゆる闇金業者にあたるため、注意しなくてはなりません。
特に譲渡したはずの債権の回収、いわゆる売掛先への請求がファクタリング業者ではなく、譲渡した企業に委託され、なおかつ、期日に回収できなかった場合には、譲渡した企業が債権を買い戻すとされている場合や譲渡した企業の自己負担で業者に支払いをする約束を迫られた場合は、ファクタリングではなく、実質的に貸付であり、貸金業登録をしていない業者は行うことができません。
さらには、業務の平穏を害するような悪質な取り立てをしてくる闇金業者もいるので、注意が必要です。
また、貸付ではなく、ファクタリングであっても、高額な手数料の業者にも気を付けるよう、金融庁から注意喚起が出されています。
高額な手数料の支払いにより、かえって資金繰りが悪化している企業が散見されるためです。

まとめ

ファクタリングが成長を遂げたのは、もともとは金融庁が売掛金担保融資の積極的な活用を推進したのがきっかけです。
その後、譲渡制限特約付きの売掛債権もファクタリングに利用できることとなり、いっそう拍車をかけました。
ですが、ここにきて悪質な業者が増えていることから、金融庁が注意喚起を呼びかけています。

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